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神津島県外昆虫調査記 
神津島天上山に登る

 県外調査は昨年度の八丈島に続き2022年7月23日・24日神津島に決まる。コロナの第7波のすさまじい感染拡大に迷いもあったが、昨年同様二週間前にワクチンを接種して、症状が出たときの検査用に抗原検査キットも用意して出かける。竹芝桟橋より高速船で3時間半で行けるが、朝早く間に合わないので夜11時発の大型客船さるびあ丸を選ぶ。1ヶ月前で1等船室しか予約できない。コロナ禍でも外出の制限はないので夏休みに入り学生が殺到しているようだ。1時間前に竹芝桟橋に着くと若者の長い行列ができている。券売機が故障して手作業でやっているという。2時間過ぎてようやく券を購入できて乗船する。もう12時を過ぎている。1等船室とはいっても相部屋であるが、一人ずつマットと毛布があるのでゆったりと過ごすことができて良い。ただ、疲れていてもエンジンの音が気になりぐっすりとはいかない。お酒でもあればと思って探す。自販機はあるが証明書がないと買えない。我慢・我慢。東京湾の夜景を見る余裕もない。朝5時ごろ、まだ伊豆大島の近くらしい。1時間出発が遅れても着く時間は変わらないことに気がつく。朝、部屋から外のデッキに出てみると、晴天の青い空、光に照らされた海の碧、素晴らしい眺めである。右手後ろには伊豆半島と富士山が見えている。①


①伊豆半島と富士山
左前方には、三角にとがっていて斜面に住宅が点在している利島が現れてくる。②見る位置によって綺麗な三角に変わる無人島鵜渡根島。次に、長くて大きな新島を経て平坦な大地が見える式根島に着く。

②利島
波が荒れているときには寄らない島もあるようだ。神津島に近づくにつれて波が高くなってきたが大型船の揺れは感じない。中央部が盛り上がって高くそびえ立っているのが天上山。③838年の火山の大噴火で生まれた溶岩ドームの山である。島の周りは断崖絶壁に囲まれ港がその中にある。建物は急な斜面に点在して少なく民宿らしきものはない。裏側、多幸湾の三浦港に10:00に着く。前日に送迎を頼んでおいた民宿の方が待っていて安心する。
 民宿街や島の中心は反対側にあり、神津島港や学校・役場がある集落である。午前中、海の露天風呂のある保養デンターに行く予定であったが、寝不足のため、高速船でお昼に到着するIさんを宿で待つことにする。神津島港名物、醤油漬けの島寿司をお昼に食べて周辺を散策する。














③神津島 天上山
白砂のきれいな前浜海岸、商店や民宿街の中を地図を頼りに歩く。行き止まりもあり、学校を左手に目印にしながら歩いて行くとよたね広場の上に神津村図書館が現れる。職員の方に道を尋ねるが看板の地図にあった階段は通れないという。脇の階段を見つけて上ってみる。時々モンキアゲハの飛翔を目撃し始める。階段を上ると左手に高処山299mの中腹を通る神津本道に出る。三崎漁港に下りないで左手に山を見ながら樹林に囲まれた林道(高処山線)に入る。途中、眼下に多幸湾を臨むことができる高処山展望台で一休み。周りにはカラスザンショウの樹木も多く、特に多いモンキアゲハ④、カラスアゲハ、オニヤンマ、花にリュウキュウツヤハナムグリを多数目撃する。昨年の八丈島でもリュウキュウツヤハナムグリは多数目撃され、最近千葉でも目撃されているという。三浦半島でも注視していきたい。神津島港は小さな島であるが水の豊富な島であり、オニヤンマが生息できる川があるのだろう。高処山を一回りして元の民宿街に戻る。民宿の近くにはカラスザンショウの大木があり、モンキアゲヤやカラスアゲハがやって来て逃げる気配もない。ようやく写真に撮ることができる。   













④モンキアゲハ   

 

 民宿に泊まって7月24日、今日も素晴らしい晴天の朝である。天上山572mに登る予定。お昼までには帰ってきたいが5時間はかかるという。7時過ぎには宿を出発する。7:30黒島登山口より登山道に入る。よく整備されて階段状に石が置かれて初心者でも登れるようになっている。何合目まで来たかという表示もありやさしい。天上山は海より立ち上り、斜面の樹木は黒松などもあるが、背丈が低く眺望がよい。登りにつれて眼下に海が広がっていく。素晴らしい眺めで疲れも感じない。頂上近くになると右手に神津港が見えてくる。左手遠くに小さな二つの岩礁、恩馳島(おんばせじま)が見える。⑤この島は黒曜石が採れるという。石器の材料として後期石器時代から縄文時代まで日本各地に送られたという。この時代に速い黒潮の流れをどのように渡ったのかロマンを感じる島である。

⑤右上に恩馳島(おんばせじま)と神津島港 

 登山道の脇に咲いているキキョウを見つける。⑥天上山は、島の固有種の植物を観察できる島でもある。8:40、千代池、1時間ほどで10合目に到着する。頂上部分は平坦でく、背より少し高い樹木が生い茂っていて迷いそうになる。そこを抜けると千代池や鏡のように周りを映している小さな沼が現れる。⑨近くでシオカラトンボ、チャバネセセリ⑦、ヤマトフキバッタ⑧、ルリシジミを目撃する。












⑧ヤマトフキバッタ  

















⑨山頂部に池や沼が多い   



⑥キキョウ 


⑦チャバネセセリ 


樹林地を過ぎて、周りは低い樹木に変わり、奇岩に囲まれた槍ヶ岳を思わせる丘、小さなアルプスの風景を思わせる。丘を通り過ぎると下に白砂の「裏砂漠」と呼ばれているところに出る。風化した流紋岩か。花崗岩が風化した白砂は、甲斐駒ヶ岳のふもとの山、日向山を思い出す。何も植物が生えていない。神々が集まり伊豆諸島をつくったという場所にふさわしい神秘的な雰囲気がある。「神集島」とも言われ、神津島という名の由来と伝説が残っている。














⑪裏砂漠

⑩小アルプスを思わせる天上山の山頂部






裏砂漠を通り抜けると天上山の山頂部の端、断崖絶壁の上に裏砂漠展望地がある。柵も何もないので足がすくんで前に出られない。海の蒼さがすばらしい、眼下に祗苗島(ただなえじま)遠くに三宅島がうっすらと見えている。⑫ここまで昆虫を探すどころではない。周りの風景に圧倒されて写真ばかり撮っている。そこから新東京百景展望地にいく途中で固有種のジャノメチョウを目撃する。手前から式根島、新島、利島を一望できるすばらしい眺めに感激。⑬


⑬新東京百景展望地

手前から式根島、新島、利島を一望



⑫裏砂漠展望地 眼下に祗苗島(ただなえじま)遠くに三宅島がうっすらと見える





午前中の半分の時間が過ぎていて正午までには宿に着かなければならない。登山は、帰りに転んだり怪我も多いので、Iさんと別れて、元来た道を引き返すことにする。その途中でカラスアゲハを写真に撮る。光の角度によって翅の反射でまぶしいくらいに輝いている。やはり島のカラスアゲハは違う。山頂になぜ?。
伊豆諸島の固有種サクユリが咲いている。カラスアゲハは山の上に集まる習性があるという。 無事に正午ぴったりに着く。神津島港に昼食がとれる食堂があり賑わっている。帰りは、Iさんと別れて、2時発下田行きのフェリーに乗る。空いていてゆったりと海を眺めながら2時間半ほどで下田港に入る。下田は何回も訪れているが、海から下田を眺めてみたいと思ったからである。下田港の脇に古びた温泉(銭湯)がある。地元の漁師さんや釣り人がよく利用しているという。そこでゆっくりして疲れを癒やすことはできたが、コロナに感染したことが翌日の抗原検査でわかる。ひどい咳をしている人が中にいたので覚悟はしていたが、幸い、人にうつこともなく熱も咳もたいしたことはなく10間をを過ごす。
 今年の県外調査会は、コロナの爆発的な感染があり、2名という少ない中で、Iさんに計画していただき、中止しないで連れて行っていただいたことに感謝したい。コロナが収まったら海岸の散策と天上山にまた行きたい神津島である。                    



⑭カラスアゲハ

  





⑮伊豆諸島の固有種
サクユリ


















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